一巡目の生命、ラオスの寺院で子供や少年たちが共同生活をし、仏教を学んでいる。一人の青年が毎日川を渡り、老女に死後の世界の道しるべとなる書物を読み聞かせる。二巡目の生命、老女があの世へ行くと、その魂は次の肉体に生まれ変わるための感覚的な旅を始める。観客は目を閉じ、音と光に流されることを自分に委ねなければならない。そして、ザンジバルの海岸で生きる白ヤギとなる。この二つの構成で結ばれる物語の合間には、生と死と瞑想の幻視体験の時間を要する。広大な自然の描写と、輪廻転生のテーマは、アピチャッポン・ウィーラセタクンの作品へと通ずる。監督のロイス・パティーニョは心理学を学んだ後、ニューヨークのフィルム・アカデミーで映画を学んだ。本作と前作『Lúa vermella(赤い月の潮)』は、ともにベルリン国際映画祭でプレミア上映され(第72回と73回)、その後MoMAや50以上の映画祭で上映された。
※一部、光の点滅が続くシーンが含まれております。光に対して敏感なお客様がご覧になられた場合、光感受性反応による諸症状を引き起こす可能性がございます。てんかんなどの症状がある方は、ご鑑賞に際して、予め注意深くご判断いただくようお願いいたします。
イングランドの最南西部に位置する歴史ある漁村、コーンウォール。伝統的な仕事を営む主人公の漁師と、リゾート化によって彼らの仕事を脅かすように溢れかえる観光客との軋轢や衝突をテーマに、閉鎖的な漁港の雰囲気と侘しく厳しい環境を描いている。閉塞感を感じさせるスタンダードサイズ、16mm フィルムに傷をつけるなどの加工で記録フィルムのような質感やセリフと音の不在などのアナクロニックな手法を施した手腕に注目。近年その癖の強い画面と見事な演出力で、評価を非常に高めているイングランドの俊英マーク・ジェンキン監督。彼は自身の出身地であるコーンウォール地域を舞台に映画を撮っている。
12/24(日)、27(水) 19:30〜(終21:04)舞台は2025 年の近未来。政府が国民の見た夢を記録し、眠っている間のその無意識の生活にも税金52¢を徴収する社会。夢監査官の主人公は長年にわたり税金未払いだった老婆の自宅を訪問し、自家製ヘッドギアでVHS に記録された彼女の夢の世界に入り込む。そして、若かりし頃の彼女に恋をする。現代の監視国家の先を行く未来と反資本主義的な風刺を取り入れ、SF ファンタジーという枠組みを超えた作品。架空の世界を取り巻く複雑な物語と『ネバーエンディング・ストーリー』を想起させるような魅惑的なキャラクターたちも見どころ。1981年アメリカのケンタッキー州生まれのケンタッカー・オードリーは監督や俳優としても活動しており、2007年のフィルムメーカー誌のインディペンデント映画の25 人のニューフェイスとして選出されている。
12/25(月)、28(木) 19:30〜(終21:06)ベルリンのとある一家のもとに、おばあさんを囲んでディナーをするために親戚が集まってくる。母親はディナーの準備をし、子どもたちは遊びまわる。家族の晩餐を準備するごく普通の土曜日の風景だが、どこか奇妙さをはらんだものとして映し出される。ある家庭の親密さ、そして、それでいて他者には理解し得ない個人の断片を描き、ごく普通の生活の中にある個人の謎や神秘性を捉えていく。監督のラモン・チュルヒャーは1982年スイス生まれ。映画監督を志し、ドイツの映画テレビ・アカデミーで学ぶ。本作で長編デビューを果たしたあと、続く2作目『ガール・アンド・スパイダー』で第71回ベルリン国際映画祭「ENCOUNTERS」部門で監督賞を受賞。現代でもっとも注目を集める映画監督の一人となる。
12/30(土) 19:30〜(終20:47)